離婚相談室 離婚の年金分割

離婚の年金分割について

離婚後の年金は女性にとって重要な問題です。

以前から専業主婦が離婚した場合の年金水準の低さが問題となっていましたが、平成16年の改正で、離婚後に夫の年金の一部を分割してもらえることになりました。老後の年金の平均額はというと、男性約年間200万円に対し女性は3割程度

以前の法律では、離婚すれば当然、女性は平均で70万円程の自分の年金だけで老後を暮らしていかなければなりませんでした。年金の受け取りは個人のものといった考えがあったからです。しかし内助の功という言葉が示す通り夫が200万円もの年金を受け取れるのは、家事や子育てを一手に引き受けた妻の力添えあってこそ。

そこで、結婚している期間に支払った保険料は夫婦が共同で納めたものとみなして、将来の年金額分け合う、というのが年金分割です。夫が払った保険料の一部(最大で半分まで)を妻が払ったものとして、将来の年金額が計算されることになります。共稼ぎの場合は、足して2で割って半分ずつまでとなります。

注意!年金分割は何もしなければ2年で権利を失います。
社会保険事務所に届出が必要です。その際も平成20年4月以前の年金の請求は御主人の同意が必要であり、御主人が同意しない場合は裁判所の決定が必要になります。平成20年4月以降の納付分に関しては社会保険事務所に届出さえしておけば自動的に分割されます。

日本の年金制度と年金分割

日本の年金制度は、3階建てになっています。

【1階部分】国民年金(基礎年金)です。

この国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務付けられています。そして、国民年金の被保険者は以下のように3種類に分けられます。

第1号被保険者
学生や自営業者などが該当し、自分で国民年金保険料を納める必要があります。
第2号被保険者
会社員や公務員などが該当し、会社員なら厚生年金、公務員なら共済年金を納める際に、国民年金保険料も納めています。
第3号被保険者
第2号被保険者に扶養されている配偶者で年収が130万円未満の人(専業主婦など)が該当し、国民年金保険料を支払う必要はありません。

【2階部分】民間の会社員なら厚生年金、公務員なら共済年金です。

国民年金の第2号被保険は国民年金と厚生年金(共済年金)とに加入していることになり、支払う厚生年金(共済年金)保険料は各人の報酬に比例し、国民年金に上乗せして支給されることになります。

【3階部分】厚生年金基金、確定給付企業年金、適格退職年金などであり、これらの制度がない勤務先もあります。

年金分割の対象

範囲

「離婚時年金分割を行えば離婚後に夫の年金の半分をもらえる」という認識をお持ちの女性が多いようですが、それは誤解です。
なぜなら、年金分割の対象は2階部分の厚生年金(共済年金)だけだからです。
1階部分の国民年金や3階部分の厚生年金基金などは分割の対象とはなりません。

ということは、結婚から離婚まで夫が個人事業主であり、妻が専業主婦である場合は離婚時の年金分割はできないということになります。
なぜなら、夫も妻も第1号被保険者であるので国民年金にしか加入しておらず、分割の対象となる2階部分(厚生年金または共済年金)には加入していないからです。

期間

年金分割が行われる対象期間は、結婚から婚姻の効力が失われたときまでです。
婚姻の効力が失われたときとは、協議離婚の場合は離婚届提出日、調停離婚の場合は離婚成立の旨の調停調書記載日、裁判離婚の場合は判決確定日です。 例えば、婚姻期間が10年ある夫婦で、その期間は夫が会社員で厚生年金に加入しており、妻が専業主婦で国民年金のみに加入している場合は、その10年間分の厚生年金保険料を納めた記録が年金分割の対象となります。
夫が結婚前に納めていた厚生年金保険料の記録や、離婚後に納めた厚生年金保険料の記録は分割の対象となりませんので、この観点からも「年金分割を行えば離婚後に夫の年金の半分をもらえる」という認識は誤解であると言えます。

按分割合

年金分割の対象範囲と対象期間をご理解いただきましたところで、それをどのように分割するかが問題となりますが、分割する割合のことを「按分割合」と言います。
この按分割合の上限は50%で、下限はその夫婦のこれまでの年金加入歴によって異なりますが、妻が婚姻中は専業主婦であった場合の下限は0となります。
この按分割合を50%にしたからといって、将来受給できる年金額は夫婦同額となるとは限りません。
あくまでも婚姻期間中に納めた年金保険料の記録を50%で分割するというだけで、婚姻期間前や離婚後の年金保険料の記録は分割の対象とならないからです。

年金分割には2つの制度があります

(1)合意分割制度

合意分割制度は、平成19年4月1日以降に離婚が成立している場合において、婚姻期間中の厚生年金(公務員等は共済年金)の標準報酬について、夫婦の合意又は裁判手続により按分割合を決定します。
この合意分割制度は、婚姻期間中の標準報酬が多い方から少ない方に対して標準報酬を分割しますので、例えば夫の婚姻期間中の標準報酬額が8000万円、妻の婚姻中の標準報酬額が2000万円で、按分割合を50%とした場合、夫から妻に3000万円の標準報酬額が分割されることになります。

(2)3号分割制度

3号分割制度は、平成20年4月1日から始まった制度ですが、離婚時の前月までの期間が分割の対象となるため、平成20年5月1日以降に離婚が成立している場合において、婚姻期間中のうちの平成20年4月1日以後の夫婦の一方が第3号被保険者(サラリーマンや公務員=第2号被保険者に扶養されている被保険者)期間中の他方夫婦の厚生年金(公務員等は共済年金)の標準報酬について、2分の1の割合で分割します。
この3号分割制度は、第2号被保険者(サラリーマンや公務員等)であった方から第3号被保険者(サラリーマンや公務員等に扶養されている被保険者)であった方に対して標準報酬を分割しますが、合意分割制度と異なり、配偶者の同意がなくとも分割できることに加えて、按分割合も2分の1(50%)と決まっています。
つまり、(1)の合意分割制度では、年金分割をするかどうかと、その按分割合について夫婦間で合意しなければならず、合意できない場合は裁判所を利用する必要があります。
逆に、(2)の3号分割制度では、平成20年4月1日以降の第三号被保険者期間に対する厚生年金・共済年金の標準報酬を配偶者の同意がなくても50%に分割できるのです。

按分割合に関する審判例

合意分割制度における年金分割を行う場合には、配偶者と協議して按分割合を決定するか、家庭裁判所の調停又は審判によって決定されることになります。
そして、家庭裁判所が按分割合を定めるにあたって、厚生年金保険法第78条の2第2項には「当該対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して、請求すべき按分割合を定めることができる」としております。
そこで按分割合に関する審判例としては、年金分割の対象機関における保険料納付に対する夫婦の寄与は、特別の事情がない限り、互いに同等とみるのを原則と考えるべきであるとした審判例(松山家審平19・5・31)があり、この審判では按分割合を0.5(50%)とされました。

他にも、婚姻中の夫婦における被用者年金は、基本的に夫婦双方の老後のための所得保障としての意義を有しているから、婚姻期間中の保険料納付や掛け金の払い込みに対する寄与の程度は、特段の事情がない限り夫婦同等とみて、年金分割についての按分割合を0.5と定めるのが相当であるところ、婚姻期間中に別居期間があることは、特段の事情に相当しないとした審判例(札幌高決平19・6・26)もあり、この審判でも按分割合を0.5(50%)とされました。
離婚時年金分割はまだ始まったばかりですので、今後按分割合についての審判例が積み上げられていくのでしょうが、上記のように婚姻中に別居期間があったとしても按分割合が0.5(50%)とされていることなどが参考になると思われます。

年金分割の手続きの流れ

離婚時における年金分割は、合意分割制度と3号分割制度に分けられます。
このうち、3号分割は、婚姻期間中のうちの平成20年4月1日以後の夫婦の一方が第3号被保険者期間中の他方夫婦の厚生年金又は共済年金の標準報酬について2分の1の割合で分割する制度であり、他方配偶者の同意は不要ですから何かを決めなければならないということはありません。
しかし、平成20年3月以前の標準報酬を分割する場合や平成20年4月以降であっても夫婦の双方が第2号被保険者である場合にその標準報酬を分割するには、上記のような3号分割ではなく、合意分割を行わなければなりません。
そのため、夫婦間で年金を分割する旨を合意することと、分割する割合である按分割合を決定する必要があります。
按分割合の上限は50%、下限は0であり、上限はどの夫婦間であっても50%となりますが、下限についてはその夫婦の婚姻期間中の年金加入歴によって異なります。
年金分割を受ける側としてはできるだけ上限に近い数字で按分割合を定めるほうが有利であり、年金分割をする側としてはできるだけ下限に近い数字で按分割合を定めるほうが有利であることはご理解いただけるかと思います。

具体的手順

1. 年金分割のための情報通知書を入手する

そこで、離婚時に年金分割を行うことを希望するのでありましたら、按分割合の下限を調べるために必要な情報を入手することから始めます。
これは厚生年金に加入していたのであれば社会保険事務所に、共済年金に加入していたのであれば共済組合に「年金分割のための情報提供請求書」を提出(用紙は社会保険事務所又は共済組合でもらえます)すれば、「年金分割のための情報通知書」を受け取ることができます。
そして、この年金分割のための情報通知書を見れば、按分割合の上限と下限が記載されています。この情報提供の請求は、夫婦双方からでも一方からでも行うことができますが、夫婦の離婚前に一方が単独で請求する場合は、夫婦関係に配慮(離婚準備をしていることを知られたくない人も多いので)して、情報を請求した側のみに提供し、他方へは知らせないことになっています。
なお、年金分割のための情報提供請求書に添付する書類は、請求者の基礎年金番号が分かるもの(国民年金手帳、年金手帳、基礎年金番号通知書等)と戸籍謄本又は戸籍抄本となります。

2. 夫婦間で話し合いをする

年金分割のための情報通知書を入手したら、いよいよ年金分割(合意分割)を行うかどうかということと、「年金分割のための情報通知書」に記載されている上限と下限の範囲内において按分割合を夫婦間で協議する。
なお、この話し合いがまとまらない場合や相手方配偶者が話し合いにすら応じないような場合には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
そして、調停の場において年金分割(合意分割)を行うかどうかということと、按分割合を話し合うことになります。
さらに、年金分割に関する調停が成立しない場合は、審判に移行し、家庭裁判所が「対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度、その他一切の事情を考慮して」定めることになります。

3. 公正証書等の作成

夫婦の協議がまとまっても、それだけでは年金分割の請求を行うことはできません。
そこで、年金分割の請求を行うためには、夫婦間で年金分割(合意分割)を行うかどうかということと、その按分割合について決定していることが分かる書類が必要になります。

具体的には以下のようなものです。

  • (1)年金分割請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨を記載し、かつ、当事者自らが署名した書類
    →ただし、この書類で年金分割を請求する場合は、当事者双方又はその代理人が社会保険事務所の窓口に直接出向く必要があります。
  • (2)公正証書の謄本若しくは抄録謄本
    →離婚協議書等を公正証書にする場合には、その公正証書に年金分割請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載されていることが一般的です。
  • (3)公証人の認証を受けた私署証書
    →上記(2)のように公正証書を作成するのではなく、年金分割請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨を記載した書類を公証役場に持参して、公証人から認証を受ける方法です。

年金分割の請求手続き

1. 合意分割

最後に実際に社会保険事務所において、年金分割(合意分割)請求の手続を行います。年金分割(合意分割)請求の手続には、以下の書類が必要となります。

  1. 標準報酬改定請求書(社会保険事務所に備え付けています)
  2. 請求者の国民年金手帳、年金手帳、又は基礎年金番号通知書
  3. 戸籍謄本、戸籍抄本等の婚姻期間等を明らかにできる書類
  4. 以下のいずれかの書類
    1. 年金分割請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨を記載し、かつ、当事者自らが署名した書類
    2. 公正証書の謄本若しくは抄録謄本
    3. 公証人の認証を受けた私署証書
    4. 調停調書の謄本又は抄本
    5. 審判書の謄本又は抄本及び確定証明書

2. 3号分割

3号分割は、婚姻期間中のうちの平成20年4月1日以後の夫婦の一方が第3号被保険者期間中の他方夫婦の厚生年金又は共済年金の標準報酬について2分の1の割合で分割する制度であり、他方配偶者の同意は不要ですが、こちらも合意分割制度同様に社会保険事務所に対して年金分割請求をしなければ標準報酬は分割されません。

年金分割(3号分割)請求の手続には、以下の書類が必要となります。

  1. 標準報酬改定請求書(社会保険事務所に備え付けています)
  2. 請求者の国民年金手帳、年金手帳、又は基礎年金番号通知書
  3. 戸籍謄本、戸籍抄本等の婚姻期間等を明らかにできる書類

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